ランニングエコノミーを決める4つの要素と改善方法とは?
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ランニングエコノミーとは、直訳すれば走りの経済性であり、VO2MAXやLT値と並び、マラソンの走力を決定する3大要素の1つです。

ランニングエコノミーはその中でも最も数値化しにくく、また最も多くの要因が絡み合って決まるものです。

そのため、これをやれば確実にランニングエコノミーが上がるというものも、またそれを数値で証明するのも難しいのが事実です。

ランニングエコノミーを決める要素はたくさんありますが、以下の4点が大きなものではないかと考えます。

ランニングエコノミーを決める要素

・エネルギー代謝
・筋肉
・血液循環器系
・ランニングフォーム

順に説明します。

ランニングエコノミーを決める要素①エネルギー代謝

走るためのエネルギーとなるのは糖と脂肪です。

これは走るだけでなく、人間が活動する上でエネルギーとなるものです。

糖は1g当たり4kcalとなるのに対し、脂肪は1g当たり9kcalです。

糖はグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられますが、貯蓄量の限界は約2,000kcalです。

それに対して脂肪は、仮に50kgで体脂肪率5%であったとしても20,000kcalを超えるエネルギーを蓄えていることになります。

2,000kcalではフルマラソンを走ることができませんが、20,000kcalはそう簡単に使い切ることができない貯蓄量です。

つまり、なるべく脂肪をエネルギーとすることがランニングエコノミーの向上につながります。

しかし、走り始めの数十分間や速すぎるスピードを出す場合、脂肪より糖が圧倒的に使われます。

なるべく糖を温存して脂肪を使うようになるためには、そのためのトレーニングが必要となります。

脂肪をエネルギーにする走り方

・長く走る
・ゆっくり走る
・空腹で走る

脂肪を燃焼しやすいトレーニングは上記のような走り方です。

これらの練習をすることで脂肪燃焼しやすい身体になっていきます。

詳しくは「ランニングによる脂肪燃焼効果を高める5つのポイントとは?」の記事を参照してください。

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ランニングエコノミーを決める要素②筋肉

筋肉には速筋と遅筋があります。

速筋は白筋、遅筋は赤筋とも呼ばれ、実際の色を示します。

赤く見えるのは、ミトコンドリアの色によるものです。

速筋は瞬発性に長け、遅筋は持続性に長け、その持っている割合は生まれつき変わらないとされています。

つまり、前述の「脂肪をエネルギーにする走り方」を繰り返すことでミトコンドリアが活性化し、毛細血管が増える効果はありますが、遅筋が増えるわけではありません。

逆に、スピード練習を繰り返すことで速筋繊維が太くなることはあっても速筋が増えることはありません。

マラソンを速く走るためには遅筋の割合が多い方が有利ですが、では生まれつき遅筋の割合が多い方が絶対的に有利かというと必ずしもそういうわけではありません。

理由は速筋にあります。

遅筋はタイプⅠとも言われるのに対し、速筋はタイプⅡa、タイプⅡxと分けられる場合があります。

持久性が高い順にⅠ→Ⅱa→Ⅱxで、瞬発性が高い順にⅡx→Ⅱa→Ⅰです。

速筋と遅筋の割合は変わらないと言ったように、速筋が遅筋になるわけではありませんが、タイプⅡxの速筋をタイプⅡaの速筋に変化させることは可能です。

より白い筋肉であるタイプⅡxの速筋に対して中間筋とも言えるタイプⅡaはピンク色をしています。

これは速筋内のミトコンドリアの赤色が増えたことによってピンク色に見えるものですが、このピンク色の筋肉を増やすことがランニングエコノミーの向上になるというわけです。

この中間筋を増やすトレーニングとして最も有効な練習がLSDです。

LSDについて詳しくは「LSDの3つの効果と3つの注意点とは?」の記事を参照してください。

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ランニングエコノミーを決める要素③血液循環器系

血液は酸素や身体に必要な栄養素を運ぶため、身体中を循環しています。

ランニング中に心拍数が上がるのは、それだけ多くの酸素を身体が必要としているからです。

一般成人の安静時の心拍数は、1分間に60〜100回と言われています。

しかし、ランナーであればこの数字を下回る場合が多く、サブスリーランナーであれば50を下回るでしょう。

その理由は、安静時に必要な酸素が一般の人より少ないというわけではなく、1回の心拍による心拍出量が多いからです。

心拍出量が多ければ、それだけ少ない心拍で酸素が行き渡るので経済的です。

つまり、安静時の心拍数は少ない方がランニングエコノミーが高いと言えます。(心拍出量が少ない場合は心疾患の場合もあります)

安静時心拍数を下げるためには、激しい運動でなくて良いので継続的に運動するのが重要です。

また、心拍数は心臓から血液を送り出す側の話ですが、それを受け取る側の機能も重要です。

血液を隅々まで巡らせるためには毛細血管の発達が必要です。

毛細血管はトレーニングにより増減しますが、これを増やすのに最も有効な練習は先ほどの中間筋を増やすトレーニングとしても挙げたLSDです。

LSDについて詳しくは「LSDの3つの効果と3つの注意点とは?」の記事を参照してください。

ランニングエコノミーを決める要素④ランニングフォーム

ランニングフォームがランニングエコノミーを決める要素であることは理解しやすいと思います。

しかし、どういうランニングフォームが良いかという点については答えの難しい問題です。

現日本記録保持者の大迫傑選手はお手本のようなランニングフォームで、そのフォアフット走法が話題になることもしばしばです。

では、必ずしもフォアフットが良いかというと、決してそういうわけではありません。

どちらかと言うとフォアフットかヒールストライクとかいう走法の話より、きちんと重心の真下で着地できているかどうかの方が重要です。

また、上半身に目を向けるとトップ選手の中でさえ、変わった腕振りをしたり、あまり腕を振らなかったりというフォームの人もいます。

元世界記録保持者のポーラ・ラドクリフさんなどは10年以上もの間、世界記録を保持していましたが、首を上下に振る独特なフォームでした。

では、上半身はどんなフォームが良いかという点ですが、こちらはリズムがとれれば何でもいいと私は考えます。

ただし、体幹は安定している必要があり、上下動・左右差は少ないのが望ましいです。

それらについてはランニングダイナミクスポッドを使えば以下のようなデータがとれます。

上下動は9.0-10.9cmが平均で、6.8cm未満が上位5%のランナーのレベルとされます。

上下動比は8.4-10.0%が平均で、6.5%が上位5%のレベルです。

接地時間バランスの左右差はないのが一番ですが、49.3-50.7%の間なら良いとされるレベルです。

ランニングダイナミクスデータについて詳しくは「ランニングダイナミクスポッドの使い方と活用方法と注意点とは?」の記事を参照してください。

ランニングフォームについて大事なことをまとめると以下の通りです。

ランニングフォームで重要な要素

・重心の真下で着地すること
・上半身はリズムのとりやすいフォーム
・体幹は安定が大事

まとめ

ランニングエコノミーは、VO2MAXやLT値と並んで、マラソンの走力を決定づける要素です。

しかし、ランニングエコノミーを上げることがVO2MAXやLT値を下げることになることもあったりするため、こればかりを考えても速くはなりません。

4つのポイントのうち、3つのポイント(エネルギー代謝・筋肉・血液循環器系)において有効なLSDですが、VO2MAXやLT値の向上にはなりません。

繰り返しですが、マラソンを速く走るためには、以下の3つを上げていくことが必要です。

マラソンの走力決定3大要素

・VO2MAX
・LT値
・ランニングエコノミー

VO2MAXについては「VO2MAX(最大酸素摂取量)とは?VO2MAXを調べる3つの方法」の記事を参照してください。

LT値については「ATペース走・LTペース走・閾値走 それぞれの意味と違いとは?」の記事を参照してください。

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