スタブロと言えばスターティングブロックのことですが、学生時代に短距離の陸上競技を経験している人ならともかく、ほとんどの人が使ったことがないと思います。
そのため、大人になってからマスターズ陸上などの大会に出場しようと思った時、立ちはだかる最初の壁がスタブロの使い方です。
事前に練習できるところも少ないため、大会でいきなり使おうと思っても、合わせ方や使い方がわからず焦ってしまうケースもあるかと思います。
この記事では、スタブロの合わせ方・使い方がよくわからない初心者に向けた、基本的なスタブロのセットの仕方から、スタートを速くするコツまでを解説いたします。
スタブロの位置の決め方
スタブロの位置設定は、選手の体型や走り方に応じて最適な位置がもちろん異なります。
一般的な基準として、前足はスタートラインから2足長、後ろ足はその位置からさらに1足長の位置に設定します。
この範囲からずれる人のほとんどが前後0.5足長なので、スタートラインから換算すると前足が1.5〜2.5足長、後ろ足がそこから0.5〜1.5足長の範囲で設定すると良いでしょう。
また、スタブロ本体の位置は、先端の部分がスタートラインから1足長あたりに設置するのが一般的です。
ただし、前足と後ろ足の位置がハマれば特に本体の位置は気にしなくても大丈夫です。
大会に出場する場合、1組目でなければ本体は前の人の設定したまま使う人の方がむしろ多いと思います。
気になる人は毎回本体から設定しなおすことをルーティーンにしてしまうと良いでしょう。
スタブロの利き足の決め方
利き足を後ろ足にし、1歩目とする人が多いです。
しかし前足が軸足となるため、利き足を前にする人も少なからずいるようなので、やりやすいと思う方で良いでしょう。
どちらがいいかわからない場合は、まっすぐの姿勢で立ってそのまま前に倒れかけた時、先に出た方の足を後ろ足に設定するというのが一般的です。
スタブロの角度の決め方
スタブロの角度は前足のフットペダルの角度を45度に設定することが推奨されています。
これはスタートセット時(「オンユアマーク」→「セット」の「セット」の時)の前足の膝の角度が45度が理想だと言われていることに起因します。
しかし、いざ設定しようとした時、フットペダルに角度が書いてあるわけではありません。
もしかしたら角度が書いてあるスタブロもあるかもしれませんが、通常試合で使われるNISHI製のスタブロには書いてありません。
目安としては真ん中あたり(上の画像のフットペダルでは4段階の設定なので2番目か3番目)で良いと思います。
それに対して後ろ足は1つ分、角度をつけましょう。
設定例としてはこんな感じです。
もう少し角度をつけたければ、このように一つずつ前に設定すると良いでしょう。
ポイントは後ろの方を急な角度にすることです。
スタブロ使用時の注意点
スタブロを使用する際、絶対にやっておくべきなのは、このように上からしっかり本体を踏み込んでおくことです。
しっかりスタブロがトラックに刺さっていないと、スタートした瞬間にはずれてしまう可能性があるためです。
2022年オレゴン世界陸上の200m予選でもスタートの瞬間にスタブロがはずれることがありました。
そのレースはやり直しとなり、当のアーロン・ブラウン選手は無事に予選を通過しましたが、トップレベルの選手でも踏み忘れてしまうことがあるので気をつけましょう。
スタートを速くするコツ
中にはスタブロを使わない方がスタートが速いという人もいます。
しかし、少なくとも100mを15秒以内で走れる筋力の持ち主であれば、スタブロは使った方が速くスタートができます。
使った方が遅いというのであれば、ちゃんと使えてないだけです。
では、どうスタブロを使ったらスタートが速くなるかという点に関して、以下説明いたします。
まず前提として「スタートのはやさ」には以下の2種類があります。
・ピストルからの反応の早さ
・スタートからの加速の速さ
スタートのピストルからのリアクションタイムはもちろん重要です。
しかし、これを磨くには「集中すること」としか言えません。
技術として磨いていくべきは、スタートしてからの加速の速さです。
スタートのセット時の姿勢で意識するのは次のポイントです。
・前膝の角度を45度に
・手を離しただけで前に倒れるくらい手に体重がかかっている
・視線は50cmくらい先
スタートのセット時(よーいの姿勢)、前足の膝は45度くらいの角度になるのが理想と言われています。
角度が浅いと1歩目を踏み出すまでに時間がかかるのと、角度をつけすぎると足が伸びきってしまい、力を入れにくいのは想像できるでしょうか?
そのちょうど良い角度が45度だということです。
次に、手に体重がかかっているかということです。
しっかり体重がかかっていれば、手を離しただけで推進力が得られますが、そうでなければすべて自分の力で前へ進まなければならないため非効率です。
そのため、しっかり手に体重をかけることを意識しましょう。
ただし、そのためには体重を支える腕の力が必要になります。
最後に視線の位置ですが、50cm程度先を見ると良いでしょう。
真下(手のあたり)を見る人が多いですが、これだと重心が腕にしっかりかかりづらいです。
少し前、具体的には1歩目で踏み出すあたりを見るのがおすすめです。
次にスタートの瞬間からのポイントです。
前提として、スタート時のように止まった状態から前にできるだけ速く進むために必要なのは、「大きな力で絶え間なく後ろから押すこと」です。
・スタート時はブロックを強く押す
・滞空時間を短く
・1〜2歩目は低く、長く地面を押す
ブロックは蹴るイメージの人もいると思いますが、より強い反発性は押す方が得られます。
スタートの瞬間だけは両足で押すことができるため、両足ともしっかり押すイメージです。
特に重要なのは1歩目となる後ろ足で、両足で押すイメージが掴みにくい場合は後ろ足をより意識しましょう。
そして、強く押すとしても滞空時間が長くなると加速力がつきません。
上に跳んでしまうと滞空時間が長くなってしまうため、前に低く跳ぶイメージを持ちます。
2歩目も同様に地面を長く強く押します。
ここで強さでなく、速さばかりを意識してしまうことで、空回りしたり早めに身体を起こしすぎたりしないよう注意してください。
また、加速するまでは姿勢は低い方が良いのですが、猫背になってしまうのは良くありません。
背中のラインはまっすぐに伸ばしながら、自然な前傾姿勢を意識してください。
スタブロ 合わせ方・使い方 まとめ
以上が基本的なスタブロの合わせ方・使い方から、スタートを速くするコツまででした。
・前足はスタートラインから2足長(前後0.5足長)程度
・後ろ足は前足からさらに1足長(前後0.5足長)程度
・フットペダルの角度は前側は45度を目安
・後ろ足のフットペダルは前より角度をつける
・スタブロ本体をしっかり踏むことで、スタート時に外れないようにする
基本的な使い方は慣れてしまえば簡単ですが、スタートがうまくなるコツを掴むには継続的な日々の練習が必要です。
なかなか個人で持っている人は少ないと思いますが、本格的にスタート技術を習得しようとするならスタブロを購入するのがおすすめです。
とにかく安くてもなんとなく練習できれば良いというのであれば、上のようなスタブロもあります。
しかし、やはりスタブロと言えばNISHI製です。
NISHI製のスタブロは高価ですが、大会で通常使われるタイプです。
そのため、練習の成果を最も試合で発揮しやすいので、真剣に記録を狙うならこのスタブロが最もおすすめです。
土のグラウンド用の固定杭とハンマーもついていますので、オールウェザートラックでなくても練習ができます。