「ズームXドラゴンフライ」「エアズームヴィクトリー」と言えば、どちらも2020年4月29日に販売が開始されながら入手困難なナイキのスパイクです。
日本ではナイキの厚底ランニングシューズばかりが取り沙汰されていますが、2019年の世界陸上のトラック種目はナイキのスパイクにより好記録が連発していました。
ロードだけでなく、トラックでも陸上界を席巻しているナイキの2つの中・長距離用スパイクについてスペックを比較いたします。
対応距離:800〜10,000m
重さ:26.5cm 約125g
アッパー:メッシュ
ミッドソール:ズームX
プレート:Pebax®製フルレングス プレート
ズームエア:なし
対応距離:800〜10,000m
重さ:26.5cm 約130g
アッパー:アトムニット
ミッドソール:ズームX
プレート:カーボンファイバープレート
ズームエア:あり(前足部)
ズームXドラゴンフライvsエアズームヴィクトリー 対応距離
ズームXドラゴンフライもエアズームヴィクトリーも対応距離は800〜10,000mとされています。
ただ、実際にはズームXドラゴンフライの方が長距離寄り、エアズームヴィクトリーの方が中距離寄りです。
ズームXドラゴンフライが5,000〜10,000m、エアズームヴィクトリーが800〜5,000mというのがより適正な距離といったところです。
ズームXドラゴンフライvsエアズームヴィクトリー 重さ
26.5cmの比較でズームXドラゴンフライが約125g、エアズームヴィクトリーが約130gです。
スパイクの中では標準よりやや軽い部類です。
ズームXドラゴンフライvsエアズームヴィクトリー アッパー
ズームXドラゴンフライがメッシュなのに対してエアズームヴィクトリーはアルファフライにも使われているアトムニットです。
ランニングシューズのエース級シューズであるアルファフライに使われているアトムニットの方が機能的に上のようにも思えますが、そういうわけでもなさそうです。
ナイキのランニングシューズはモデルチェンジの際、アッパーだけ仕様変更するマイナーチェンジがよくありますが、最近の傾向としてはいったん「ニット」に行った流れが「メッシュ」に戻って来ている感じです。
ヴェイパーフライシリーズは初代4%がメッシュ、4%フライニットがフライニット、ネクスト%がヴェイパーウィーヴというトランスルーセントでしたが、ネクスト%2ではメッシュに戻ります。
ナイキはプレートやミッドソールは確実に進化していますが、アッパーは試行錯誤しているという印象があります。
このズームXドラゴンフライとエアズームヴィクトリーのアッパーの違いも、どちらが上かという点でなく、どちらが好みかといった感じかと思います。
ズームXドラゴンフライvsエアズームヴィクトリー ミッドソール
ミッドソールにはどちらもズームXが使われている点は同じです。
ズームXはランニングシューズ「アルファフライ」「ヴェイパーフライ」にも使われている、超軽量で反発性・クッション性に優れるナイキ最上位のミッドソール素材です。
クッション性はドラゴンフライの方があります。
反発性に関してはズームXよりプレートが鍵となります。
この点はズームXドラゴンフライがPebax®製プレートなのに対してエアズームヴィクトリーはカーボンプレートです。
カーボンプレートはランニングシューズでもトップモデルには装備されることが多くなってきましたが、硬く反発性を与えてくれる物であることはご存知の通りです。
では、これに比べてPebax®製プレートがどうなのか?という点ですが、反発性はカーボンプレートより劣るものの、軽量性や足への負担の少なさという点ではカーボンプレートより上ではないかと思われます。
また、反発性の点ではプレートより与えてくれるのがズームエアです。
ズームエアはズームXドラゴンフライにはなく、エアズームヴィクトリーのみ前足部に入っています。
ズームXドラゴンフライvsエアズームヴィクトリー アウトソール
どちらもピンは6本、前足部はラバーで覆われ、後足部はズームXクッションです。
アウトソール単体で見ると大きな差は見られません。
ズームXドラゴンフライ 使用者
2020年に5,000m・10,000mの世界記録を出したジョシュア・チェプテゲイ選手を始め、ズームXドラゴンフライを使用するトップ選手は数え切れません。
2020年12月に行われた日本選手権の男子10,000mトップ10のうち、日本記録を出した相澤晃選手をはじめ、7人がドラゴンフライを履いていました。
日本選手権での着用者と順位・記録は以下の通りです。
1位:27分18秒75 相澤晃(日本記録)
2位:27分25秒73 伊藤達彦(日本記録)
5位:27分36秒29 鎧坂哲哉
7位:27分41秒84 佐藤悠基
8位:27分46秒09 田澤廉
9位:27分50秒09 村山謙太
10位:27分52秒27 丸山竜也
女子10,000mで日本記録を出して優勝した新谷仁美選手もドラゴンフライでした。
エアズームヴィクトリー 使用者
エアズームヴィクトリー使用者で有名人は三浦龍司選手です。
2020年7月には男子3000m障害で日本歴代2位(学生記録、U20日本記録)の8分19秒37を打ち立て、2020年9月の日本インカレでは、大学1年生ながら3,000m障害で優勝しています。
また、前述の2020年の日本選手権10,000mで6位に入った大迫傑選手は周囲の選手がズームXドラゴンフライを履く中、エアズームヴィクトリーを着用していました。
ヴェイパーフライ・アルファフライとの関係
ズームXドラゴンフライ・エアズームヴィクトリーの関係は、ランニングシューズのヴェイパーフライネクスト%・アルファフライネクスト%に似ています。
つまりズームXドラゴンフライはヴェイパーフライネクスト%と、エアズームヴィクトリーはアルファフライネクスト%と相関関係があると考えられます。
ロードでの人気は二分されているヴェイパーフライとアルファフライですが、比較的扱いやすいヴェイパーフライに対し、前足部着地が絶対的に求められるアルファフライといった感じです。
エアズームヴィクトリーとアルファフライには「エア」が入っており、ズームXドラゴンフライとヴェイパーフライには入っていないという点も同じです。
アッパーはズームXドラゴンフライがメッシュ、ヴェイパーフライはヴェイパーウィーヴでこの2つは違いますが、エアズームヴィクトリーとアルファフライはアトムニットで共通しています。
なお、フォアフットで有名な大迫傑選手はアルファフライでマラソン日本記録(当時)を出していますが、10,000mでエアズームヴィクトリーを履いているというのは、よほどエアのある前足部での着地がハマる感覚があるのだと思われます。
なお、アルファフライとヴェイパーフライのスペックやそれぞれに向くランナーなどについては「アルファフライVSヴェイパーフライ徹底比較」にてまとめてますので、よろしければ参照してください。
[補足]もう一つのスパイク「ズームスーパーフライエリート2」
ズームXドラゴンフライもエアズームヴィクトリーも2020年4月29日に発売されたものですが、同時にズームスーパーフライエリート2という短距離用スパイクも発売されています。
こちらについては「ナイキ ズームスーパーフライエリート2」レビュー!の記事で詳細スペックやレビューをまとめてますので、よろしければ参照してください。
ズームXドラゴンフライvsエアズームヴィクトリー 特徴まとめ
以上のスペックの違いを踏まえた特徴のまとめです。
ズームXドラゴンフライとエアズームヴィクトリーとの比較という意味で書いてます。
他の長距離スパイクとの比較ではありませんので、その点ご了承ください。
・5,000〜10,000mにおすすめ
・クッション柔らかめ
・反発やや強め
・扱いやすい
・ヴェイパーフライと相関関係あり
・800〜5,000mにおすすめ
・クッション硬め
・反発かなり強め
・扱いづらい
・アルファフライと相関関係あり
エアズームヴィクトリーは全く同じ名前のゴルフシューズがあります。
また、「ズームヴィクトリー3」「ズームヴィクトリーエリート」という似たような名前の「エア」の入っていないスパイクがありますので、購入時はご注意ください。