ナイキの厚底のエース級シューズであるヴェイパーフライとアルファフライの能力を数値で徹底比較してみました。
能力値を検証するのに使ったのはランニングダイナミクスポッドで、比較したシューズは以下の3足です。
①ズームヴェイパーフライ4%フライニット
②ズームXヴェイパーフライネクスト%
③エアズームアルファフライネクスト%
正式名称はいくらなんでも長過ぎるので、以下①ヴェイパー4%②ヴェイパーネクスト③アルファフライにそれぞれ略して説明します。
アルファフライvsヴェイパーフライ 比較条件
なるべく差が出ないよう、以下の共通条件下で自分の身体を使って人体実験しました。
①午前中に1,000m、夕方に200mにてTT
②1,000mTT直後は200m×5インターバルを実施
③6月12日、19日、26日と1週間おきに実施
④ヴェイパー4%→ヴェイパーネクスト→アルファフライの順で実施
⑤1人で実施
⑥前日は走らない
こんな具合で自分のコンディションはなるべく均一に整えましたが、気象コンディションとしては19日の夕方雨だったり26日は結構暑かったりという均一にならない部分もありました。
アルファフライvsヴェイパーフライ 1,000m結果
まずはヴェイパー4%の結果です。
続いてヴェイパーネクストの結果です。
誤差と言っていいレベルです。
最後にアルファフライです。
圧勝でした…
アルファフライvsヴェイパーフライ 200m結果
まずはヴェイパー4%です。
続いてヴェイパーネクストです。
最後にアルファフライです。
1,000mよりわかりにくいですが、200mでこの差は大きいです。
こちらもヴェイパー4%とヴェイパーネクストは誤差でした。
アルファフライvsヴェイパーフライ ランニングダイナミクス検証
冒頭にも書きましたが、ランニングダイナミクスポッドを使ってデータをとりました。
ランニングダイナミクスポッドはガーミンと連携させて使うもので、フォームなどに関連するランニングデータがとれます。
詳しくは「ランニングダイナミクスポッドの使い方と活用方法と注意点とは?」の記事で書いてますので、ここでの詳細説明は割愛します。
以下、1,000mのランニングダイナミクスですが、かなりわかりやすい結果となりました。
まずはヴェイパー4%の結果です。
続いてヴェイパーネクストの結果です。
最後にアルファフライの結果です。
平均ピッチは201〜205spmと、大差はありません。
spmとはstep per minutesの略で、1分間のピッチ数です。
注目すべきは平均ストライドで、1.65cm→1.68cm→1.72cmと、ヴェイパー4%→ヴェイパーネクスト→アルファフライとだんだんと伸びている点です。
アルファフライのエアズームポッドは反発力があると感じてはいましたが、データでそれを証明できました。
これまでどのシューズを履いて走っても1.7mのストライドを超えることはできなかったので、今回の結果が偶然とは思えません。
ヴェイパーネクストと比較して4cmの差ですが、4cmの差は「わずか」ではありません。
1分間に200ピッチを刻むことを考えると4cm×200回=800cmと、1分間で8mの差が生じます。
実際にはピッチ数が落ちている分、そこまでの差にはならないものの、かなり大きな差だということはおわかりいただけるかと思います。
また、平均接地時間が150msという短さがアルファフライの反発力を物語っています。
msとはmilli secondの略で千分の1秒を表します。
つまり平均して0.15秒の接地時間ということです。
うまくズームエアポッド部分で着地すると、その反発感で脚離れもよく、前に飛ぶような感じが得られました。
アルファフライの向くタイプのランナー
以上の結果から、歴代のナイキの厚底シューズの中でもアルファフライは最もポテンシャルの高いシューズと言えます。
しかし、誰にでもおすすめできるシューズではないと感じたのも事実です。
ここからはデータでなく感覚的な話ですが、おそらくヴェイパーネクストの方が向いているランナーは多いと思います。
先にアルファフライの向くランナーの特徴をまとめるとこんな感じです。
フォアフットで着地できる
反発を使った走りが得意
体重が重い
まずはズームエアポッドのついている前足部で着地できることです。
丸囲みのところです。
かかとから着地してもズームエアポッドの恩恵は受けられますが、やはりこの部分で着地するのと、かかとから着地して重心を移動させるのでは反発のノリ具合が違います。
ズームエアポッドを拡大するとこんな感じです。
ここでうまく着地した時の反発感は実験の通りです。
二つ目の反発を使った走りが得意という点ですが、これはフォアフットと共通するところもあるかもしれません。
足を置きに行くような走りをするランナーは、バテないタイプが多いですが、反発を使ってうまくスピードに乗ることが難しいのではないかと思います。
最後に体重の重さです。
ズームエアポッドに体重をかけることで、より反発力が得られるからです。
また、重いというのは単純に体重が重いというより、反発を使えるようなしっかりした筋肉を持っているが故に体重が重いということを指しています。
それでは反対にアルファフライよりヴェイパーネクストの方が向いているランナーはこんなタイプです。
かかと着地である
反発をあまり使わない
体重が軽い
当然ながら、さっきと逆のことを言っているだけです。
ヴェイパーフライネクスト%は、かかと着地のランナーでも使えるという点で多くの市民ランナーがこのシューズで自己ベストを出せたと思います。
フォアフットではダメというわけではなく、どこで着地しようがパフォーマンスを発揮できるという点でこれ以上ないシューズではないかと思います。
「反発をあまり使わない」という点は、ヴェイパーネクストに反発性がないという意味ではありません。
以前のシューズに比べてヴェイパーネクストは最高レベルの反発性を持っています。
普段はあまり反発を使わずに走っているランナーにも反発力を提供しているという意味を言っています。
つまり前足部で着地しないとうまく反発性を生かせないアルファフライに対して、ヴェイパーネクストはかかとで着地しても反発性を得られるということです。
最後に体重の点ですが、単純にアルファフライより20gは軽いヴェイパーネクストの方が非力なランナーには向いているかもしれないということです。
また、ややこしくなるのでここでは詳細説明は割愛しますが、ヴェイパー4%はどちらかというとヴェイパーネクストよりアルファフライに近いコンセプトや履き心地を持っていると思います。
まとめ
アルファフライは履くランナーを選ぶシューズではありますが、向いている人が履けば圧倒的に高いパフォーマンスを発揮できるシューズだと証明できました。
一方でヴェイパーネクストは誰にでもおすすめできるような大衆向けのエース級シューズです。
どちらが上というわけではありませんが、どちらも良いシューズであるのは間違いないので自分の走り方に合ったシューズを選ぶことをおすすめします。
なお、アルファフライのスペックなどについては「ナイキ エアズームアルファフライネクスト%徹底レビュー!」の記事でヴェイパーフライと比較しながら書いてますので、よろしければ参考にしてください。